歯科医師、歯科衛生士が担う介護上の役割は居宅介護サービスの中の「居宅療養管理指導」になります。
この「居宅療養管理指導」とは、病院、診療所または薬局の医師、歯科医師、薬剤師、歯科衛生士、管理栄養士等により通院が困難な利用者に対して、その居宅を訪問して、その心身の状況、置かれている環境等を把握し、それらを踏まえて療養上の管理及び指導を行うことにより、その者の療養生活の質の向上を図るものでなければならないとされています。
実際に「居宅療養管理指導」の必要性が生じた場合、歯科医師は、計画的かつ継続的な歯科医学的管理に基づく指導・助言を要介護者等本人・家族に行うとともに介護サービス計画(ケアプラン)を作成する介護支援専門員(ケアマネージャー)に対して必要な情報提供を行い、一方、歯科衛生士は当該歯科医師の指示に基づき、療養上必要な指導として要介護者の口腔内の清掃または有床義歯の清掃に関する実施指導等、歯科衛生指導を行うこ とになります。
なお、施設介護サービスにおける歯科の介護サービスは現在のところ位置付けられておりません。位置付けられていない。従って、施設入所の要介護者等から診療の依頼があった場合は、全て医療保険上での取り扱いとなります。
それでは、歯科医師による「居宅療養管理指導」は、どういう場合やどのような経過を経て実際のサービス提供が行われることになるのでしょうか。
通常の場合、介護支援専門委員(ケアマネージャー)から歯科訪問診療の依頼が歯科医師に対して行われることによって始まります。
つまり、介護支援専門員(ケアマネージャー)が介護サービス計画(ケアプラン)作成の段階において、訪問調査結果から口腔内に何らかの問題がある場合、主治医意見書の「医学的管理の必要性」欄の中にある「訪問歯科医療」や「訪問歯科衛生指導」の項目にチェックが行われている場合及び要介護者本人へのアセスメント(課題分析)を行った際、口腔内に問題がみつかった場合に介護サービス担当者会議に報告、相談が行われ、その結果、歯科訪問診療が必要であるとされた場合に歯科医師に対して依頼が行われることになります(要介護者等本人の同意が必要)。
これに基づいて、歯科医師は歯科訪問診療を行うことになりますが、殆どの場合、何らかの歯科疾患を有していると考えられることから治療を行うことが想定され、この場合、歯科訪問診療に要した費用は医療保険で請求を行い、今後の計画的・継続的な口腔管理が必要であると判断し、本人・家族に対してその指導、助言を行うとともに介護支援専門員(ケアマネージャー)に情報提供を行った場合は「居宅療養管理指導」として介護保険で請求することになります。